2017/11/23 09:00

ピーコートと言えば大型の錨が彫り込まれたボタンですね。

一般のピーコートはプラスチック製の物が多いですが、ARCH∧BES(アークビス)のピーコートに使われているボタンは全て別注品の
13スターマーク入りのベークライト製です。
大きさは37mm。冬場の寒い外でもグローブをしていても外しやすい様に規格外の大きさになっています。

ベークライト(フェノール樹脂)は最も古い人工的に作られたプラスチック素材です。

現在ではほとんどが別のプラスチック素材にとって変わられていますが、一番はじめに発明されたのは今から100年以上前の1907年。ベルギー出身のアメリカ人化学者であるレオ・ヘンドリック・ベークランドが開発しました。

プラスチックには大きく分類して二つの種類に分けることが出来ます。

加熱すると溶けて柔らかくなり、冷却すると固まる熱可塑性樹脂と、通常は液体だが加熱すると硬化して元に戻らなくなる熱硬化性樹脂です。
現在プラスチックとしては熱可塑性樹脂のほうが種類も圧倒的に多く、工業製品にも多用されていますが、
実は最初の人工的なプラスチックは熱硬化性樹脂のフェノール樹脂(ベークライト)です。
このフェノール樹脂(ベークライト)は世界で初めて植物以外の原料から人工的に作り出されたプラスチック素材でもあり、
多くのプラスチック素材にとって変わられるまでは、あらゆる工業製品に使用されてきました。
ベークライトの耐熱性は130度2時間経過して外観には変化が見られませんでした。

ベークライトは熱で溶けてしまわないプラスチックです。熱で硬化はするのですが、それによって溶けてはしまわないのです。

フェノール樹脂(ベークライト)の長所

  • 電気絶縁性:高い電気絶縁性を持つ。電気を通さないことから、電子部品や半導体に使用される。
  • 耐熱性:高い耐熱性を持つ。耐熱温度は150度から180度で高温でも強度を保持。
  • 断熱性:断熱性が高く、熱が伝わりにくい。鍋の取っ手や断熱材としても最適。
  • 難燃性:燃えにくい特性を持つ。
  • 寸法安定性:寸法安定性に優れ加工しやすい。
  • 接着性:高接着性を持ち、接着剤や塗料などの主成分になる。
  • 耐酸性:耐酸性に優れる。

フェノール樹脂(ベークライト)の短所

  • 耐アルカリ性:アルカリに弱い。
  • 耐衝撃性:耐衝撃性は高くない。硬くて脆いため繊維などの強化剤を配合したコンポジット材が開発されている。

このような特性を持つことからヴィンテージウェア、ミリタリーウェアのボタンの多くは(ユリア樹脂)尿素ボタンかベークライトボタンが多いです。

さまざまな日用品、一般消費財の成形材料として使用され、1920年代にはジュエリーの材料として使用が開始。かの有名なココ・シャネルがフェノール樹脂(ベークライト)のブレスレット、ドレスのボタンなど宝飾品としても使用されています。

ARCH∧BES(アークビス)のピーコートは1910年代〜1940年代の米海軍のピーコートの良い部分をミックスして作られています。

この様な背景を持つためにボタンなどの付属も含めヴィンテージのピーコートにも採用しています。

ボタンに刻まれた13の星はアメリカ建国当時の13州に因んでデザインされています。

価格的には通常のボタンの5倍以上の価格ですが、ベークライトのボタンの持つ独特の感触、丸み、色の深みは何者にも代え難い物です。

神は細部に宿るといいますが、身頃に配した毛芯や衿の内部の麻芯、ポケットの袋布のコーデュロイ等、この様なパーツの積み重ねによって、形だけで無く、その当時の製品に込められた思いや背景を汲み取ったモノ作りをしています。

ぜひお手にとってご確認頂けれると幸いです。